校長会予備調査から見えること

校長会予備調査とは

 先日「都立高校志望予定調査」が発表されました。これは公立中学校の生徒を対象に、中3の12月時点での志望校を調査したもので、「校長会予備調査」と呼ばれます。もちろん実際の出願ではないので、あくまでも予測の範囲を出ませんが、受験生たちの志望動向をある程度知ることができる貴重な資料です。今回はこの調査結果から考えられることをいくつか取り上げてみたいと思います。

高まる私立志向

 

 まず、都立全日制高校を第1志望とする人の割合は、前年・前々年よりも連続して減少しています。反対に、私立高校(国立や他県を含む)の第1志望者は連続して増加しています。要因は、東京都版の私立高校の授業料軽減の拡張策(家庭年収約760万円相当以下は実質授業料無償化)にあると推測できます。
 ただし、後で詳しく触れますが、都立高校では普通科へ人気が集中していること、さらにその普通科の中でも高倍率の学校があることなどから、志望者が減ったからと言って、簡単に入学できるようになったとは断定できません。

各高校の倍率



 近隣の普通科都立高校の倍率を上の表にまとめました。ここで「予備調査」は校長会予備調査での倍率、「応募倍率」は願書提出時点(差し替え後)の倍率、「実質倍率」は合格発表時の倍率で、これが実際の難易度を示します。
 日比谷は応募倍率は上がりますが、国立や私立難関校の合格者は欠席することが多いため、実質倍率は予備調査と同じ程度になります。今年は男女で例年より大きな差が生まれました。戸山も欠席が多いので、一度応募倍率は上がるものの、実質倍率は少し落ち着くと思われます。ただ女子はかなり高倍率なので、多少下がったとしても厳しい入試になりそうです。三田は男子が低く女子が高いですが、男女別定員制の緩和(定員の1割は男女混合で選抜する)によって調整されるため、昨年同様、最終的な実質倍率での差は小さくなるでしょう。
 小松川、城東、上野は校長会調査と実質倍率に大きな差がありません。今年は人気が高まり、倍率も高めに出ています。江戸川は1学級減の影響もあってか、男女ともかなり高倍率です。このような高倍率の年は、過去の例では応募の段階で志願者が他に流れる傾向があるので、このままの高倍率を維持するとは思えませんが、どこまで下がるかは不明です。
 江北は例年実質倍率のほうが高くなる傾向があります。今年度は校長会調査の段階ですでに高いので、ある程度歯止めがかかる可能性もありますが、人気校なので入試は厳しくなるかもしれません。本所は高倍率と低倍率が交互に繰り返される傾向があり、実際今年は高倍率になっています。応募の段階である程度緩和されるかもしれませんが、楽観はできません。小岩は男女とも2倍を超えるという大人気ぶりです。どちらも高倍率なので、男女別定員制の緩和はあまり効果がありません。この倍率をみて志願者が多少は減るかもしれませんが、それでも厳しい入試になるのは間違いないでしょう。日本橋と南葛飾はともに高倍率です。過去の様子を見ても、倍率はさほど変わらないか、むしろ高まる可能性すらあります。



 商業科と工業科は、前年が驚くほどの低倍率だったので、今回はその反動で志願者が増えるかと思われましたが、倍率が1倍を超えたのが商業科2校(全9校)、工業科2校(全16校)のみとなっており、前年と同様に普通科志向が強いことが分かります。実際の出願時には少し倍率も上がると思われますが、さほど厳しい入試にはならないでしょう。
 中高一貫校の白鴎、両国は低い倍率ですが、これは毎年のことです。2学級募集という枠の狭さ、国数英のグループ作成問題、附属中学からの内進生の存在など、志望が限定される要因があり、学力面や進学対策で成果をあげている学校でも敬遠傾向がみられます。将来的には高校募集を停止する方針が発表されており、今後の詳しい計画については2月に公表される予定です。